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編集後記

 

夏が終わり秋となりました。O−157の騒ぎのせいでしょうか、この夏、当センターのプールに来るカッパの数も少なかったようです。「JAMSTEC」通巻第32号をお届けします。
依頼原稿では、東京大学海洋研究所教授の小池勲夫先生に「海洋中に漂うさまざまな有機物」と題してご執筆いただきました。副題に示されているとおり、肉眼で見える大きな粒子であるマリンスノー(海の雪)から1ミクロン(1mmの千分の1)以下の微小コロイド粒子まで、海中の懸濁粒子の挙動について紹介されています。小さな粒子の数は大きなものに比べて圧倒的に多いようです。大きな粒子と小さな粒子は相互作用をしており、壊れ易いマリンスノーは容易に小さな粒子となり、逆に実験室では小さな有機物粒子から人工のマリンスノーを作ることができます。従来、この分野の研究は、既存の海洋物理学、海洋化学、海洋生物学の境界領域に属するために避けられてきたようです。海洋科学の観点からも、各分野の研究者が共同で研究を行い、このような課題に総合的に取り組む必要があります。
研究紹介では、深海研究部の藤岡研究主幹と海宝研究員に、1994年に「しんかい6500」などを用いて実施された国際共同研究、MODE’94計画の一環である東太平洋海膨南部での潜航調査結果について紹介してもらいました。
深海環境プログラムの加藤チームリーダーには、圧力によって変わる微生物の遺伝子の働きの研究を紹介してもらいました。深海の試料から分離した2種の微生物と陸上の大腸菌が比較されています。生命の進化を探る糸口を与えそうな、夢のある研究です。
海洋観測研究部の畠山・中村研究員は、今年の4月、北極海の海氷に設置されている自動観測ステーションに行き、観測を継続するために電池やセンサーを交換してきました。リアルな写真を交え、白熊に注意しながらの氷点下数十度の氷上作業の様子を紹介してもらいました。
今回の研究(技術)部紹介は、主として深海を研究するために必要となる海中機器の開発を行っている「JAMSTEC唯一の技術者集団」、深海開発技術部が出番です。
海外事情では、企画部計画管理課の堀田課長に米国のウッズホール海洋研究所の予算管理、人事管理、研究評価等ならびにカナダの海洋研究所・大学の研究環境について報告してもらいました。
深海研究部の満澤研究員は、カナダの海洋科学研究所に留学中です。音響を利用した研究のこと、高い州・国税など生活のこと、そして江戸時代に近くの岬に漂着した3人の日本人のことなどを紹介してもらいました。
「海からのたより」では、「しんかい2000」と「しんかい6500」のパイロットを長年勤め、今「おか」勤務となっている、運航部運航課の田代課長代理に経験談を披露してもらいました。運航チームの掟を破って、寄港地でのナイトライフの一部が紹介されています。特に、南米の港町バルパライソの「キャプテン」のくだりは、印象的です。また、しんがい6500運航チームの川間整備士は船乗りのジンクスなどを紹介しています。海や船という女性に恋するように、潜水船だけを想い続ける男も多いとか。
トピックスでは、この8月に続いて進水した、「かいれい」と「みらい」について深海開発技術部に解説してもらいました。また、研修室には、この8月に行われた2つの海洋研修「マリンサイエンス・スクール」と「サイエンス・キャンプ」について報告してもらいました。とくに高校生を対象とした後者では、応募者の85%が女子だそうで、海への女性の憧れが感じられます。
本号は、久々に80ぺージを超えるボリュームとなりました。最後になりましたが、本号の発刊にあたりご執筆・ご協力いただいた関係各位にお礼申し上げます。
(辻)

 

 

 

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